ヤエスのFR-50B,FL-50BラインはAM~SSBへの過渡期のトランシーバー

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FL-50B

ヤエスはSSBの先駆者

ヤエスはアマチュア無線のSSBにおける先駆者です。

 ヤエスはアマチュア無線においてまだAMの全盛時代で、SSBが一部のマニアにしか認知されていなかった昭和35年からSSBジェネレーターを販売しておりました。

昭和37年には 3.5Mc帯~28Mc帯10W SSB送信機FL-20を49,800円で販売しました。

しかしまだSSBは一般的でなく、FR-50B,FL-50Bラインあたりから徐々に認知されていきました。

 トリオがSSBの送信機TX-388Sを販売したのは昭和40年です。

SSBに関してはヤエスの方が熱心でした。

SSBとは変調方式の一つでフィルタなどによって、上側波帯(USB)か下側波帯(LSB)の片側だけを取り出す変調方式で、AMに比べて占有周波数帯域が半分,高周波パワーが1/4で済みます。

AMとは振幅変調方式の電波で中波の放送と同じです。

なつかしいOMさんからの買取依頼

市内在住の聞き覚えのあるAコールのOMさんより電話で買い取りの依頼があり、当店までお持ちいただきました。

お話を伺っておるうちに思い出してきました。

聞き覚えのあるコールサインのはずで、半世紀も昔のことですが何度か交信しておりました。

持ち込んでくれたHFの無線機はすべてヤエス製品です。

FT-101B,FR-101B,FL-101ラインに混じってFR-50B,FL-50Bラインがありました。

昭和44年9月にFR-50B,FL-50Bは、初級用のSSB運用が可能なアマチュア無線機器として発売されました。

まだSSBよりもまだAMが主流と言うかちょうど過渡期であったように思います。

FR-50B

FR-50B

FR-50Bの回路構成は第1局発可変、第2局発が水晶発振のダブルコンバージョンスーパー受信機です。

 周波数構成については、当時の標準的なコリンズタイプとは異なっており、変則的な構成となっています。

FR-50Bでは第一局部発振に水晶発振を使用せず、コイルによる可変同調機構とし、第二局部発振部に水晶発振を採用しています。

コリンズとは逆の構成になっています。
ダブルスーパー構成でも水晶が1個で済みコスト削減にはなりますが、バンドごとにVFOの発振周波数が違います。

これがハイバンドの周波数が不安定になる一つの要因となっています。
このような構成の受信機の欠点は、各バンド帯で周波数更正が必要となり、正確な周波数の把握が困難になります。

このような構成にしたのは第一局部発振に大量の高価な水晶振動子を使用する事によるコストアップを避けたためと思われます。

SSB,AM,CWとも4KHzのメカニカルフィルターを2個使用して選択度を得ています。

当時の多くの無線機と同様にVFOと第2局発はトランジスターでそれ以外は真空管になっております。

ヤエスのダウンロードサービスにはFR-50,FL-50はありますが、FR-50B,FL-50Bはありません。

両者では回路が少し異なっております。

回路図はネットで入手可能です。

FL-50Bと組み合わせて受信周波数をそのまま送信周波数とするトランシーブ動作が可能です。
モニター回路も内蔵しております。

キャリブレーターはオプションですが、本機には内蔵されておりました。

スピーカーも本来は付いてないのですが、内蔵されており、取り付けの板の加工に苦労されたあとがあります。

内蔵スピーカー

FR-50Bは事前の点検で、他の無線機同様VRのガリ、各スィッチの接触不良が確認されております。
7MHzでは短いリード線を繋いでも結構アマチュア局が聞こえております。

1 調整にあたってはテスター、バルボルまたはオシロスコープ、SSGが必要です。

2 取扱説明書に記載の各部の電圧を測定しますが、本機は大きな違いはありませんでした。

3 第2IFの調整はSSGから455KHzの信号をV3のG1に加え、MF1,MF2のコアをSメーターの最大点に調整します。

4 第1IFの調整はSSGから5.1739MHzの信号をV2のG1に加えL6の上下のコアでSメーターの最大点に調整します。

5 第2局発は水晶発振であるしカウンターが校正してありませんので、発振の確認にとどめておきます。

6 VFOの周波数調整と高周波増幅部等のトラッキング調整はここでグダグダと書くよりも取扱説明書に記載されておりますのでそちらを参照してください。

結論から申し上げますと調整には少々時間がかかりましたが、各部の調整以外は多くの無線機同様接点クリーナーを吹き付けることによってほとんど解決しました。

経験上では一部のトランジスターと電解コンデンサーの交換と、接点の接触不良とVRのガリを直せば大部分の無線機が復活します。

トリオ製のアマチュア用無線機に多用されている2SC458は経年による不良が多いのですが、2SC372はさほどでもないように感じます。

2SC458は製造中止で入手は困難ですが、2SC1675で代用できます。

2SC1675は簡単に入手できます。

FL-50B

FL-50B

FL-50Bは単独で動作を確認するには、少々厄介です。

現在の無線機と違ってVFOがありません。

単独で動作させるにはFT243型の水晶が必要になります。

昔はいくつか持っておりましたが、現在は手持ちがありません。

外部VFOやFR-50Bで使用するには、ケーブルが必要になってきます。

本機にはケーブルはもちろんリモート用プラグもありません。

このプラグが無いとFT-101等ヤエスのこの時期の無線機同様ファイナルの6JS6のヒーターが点灯しません。

もちろんリード線等で1番ピンと2番ピンをショートさせれば使用できます。

とりあえず手持ちのFT-101からプラグを借用して電源を入れてみました。

これですべての真空管の灯が灯りました。

終段管の6JS6の各部の電圧はプレートが340V,スクリーングリッドが125V,コントロールグリッドには-74.4Vがかかつており、ベース電流は約40mAくらい流れております。

ここまではOKで問題は第2局発の水晶です。

3.5,7MHzのLSBでは目的周波数に搬送波周波数の5172.4KHzを加えた周波数の水晶。

14MHz以上のUSBでは目的周波数から搬送波周波数の5172.4KHzを引いた周波数の水晶が必要になります。

FL-50BはFR-50Bとペアになる送信機で,FR-50BのVFOでトランシーブ操作ができます。

と言うよりも,こうしない事にはバンド毎に高価な水晶を用意する必要があります。

でもトランシーブの場合に必要なはずのRITはなく,BFOピッチで代用しています(送信機のキャリア水晶のズレ,受信機の第二局発のズレをBFOで補正しています)。

回路図を見て違和感を感じたのはAF初段の6BA6です。
通常オーディオ回路では5極管であれば6AU6を使用しますが、6BA6にしたのは多分
6BA6であれば高周波回路で多用されますので、水晶発振子の数を減らしたのと同様大量発注によるコストカットだと思います。

さらにキャリアの再注入量が連続可変できるので,A3JのみならずA3AでもA3Hでも出ることができます。

改めてケーブルを準備してFR-50Bとトランシーブするか、外部VFOを使用しなければ先には進めません。

残念ながら現状では自分で使用する予定はありませんので、それだけの熱意も根気もありません。

ヤエスの他の機種に関しては👇

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