FT-101の発売元八重洲無線株式会社
アマチュア無線の大先輩である長谷川佐幸氏(JA1MP)が、1956年に設立した株式会社ゼネラルテレビサービスが前身で、バ-テックス スンダ-ドを経て八重洲無線株式会社に至ります。
まだAMの全盛期というよりもAMオンリーと言ってもいい、1960年からSSBジェネレーターを販売していました。
FT-101発売までの経緯
ヤエスからFT-101がはじめて世に出たのは、1970年の事です。
1973年にFT-101B,1975年にFT-101E,FT-101ES,1979年にFT-101ZDが順次発売されました。
後に1973年に発売されたトリオのTS-520と並んで1970年代を代表するHFの銘機として並び称されました。
発売年 | 型名 | 分類 | 仕様 |
1962 | FL-20 | 送信機 | 3.5-28Mc SSB/CW |
1963 | FL-10 | 送信機 | 7Mc AM/CW/SSB |
1964 | FR-100B | 受信機 | 3.5-30Mc SSB/CW/AM |
1964 | FL-100B | 送信機 | 3.5-30Mc SSB/CW/AM |
1967 | FL-50 | 送信機 | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1967 | FR-50 | 受信機 | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1967 | FT-100 | トランシーバー | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1967 | FTDX400 | トランシーバー | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1967 | FRDX400 | 受信機 | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1967 | FLDX400 | 送信機 | 3.5-29.7MHz SSB/AM/CW |
1968 | FT-200 | トランシーバー | 3.5-30MHz AM/CW/SSB |
1969 | FTDX100 | トランシーバー | 3.5-30MHz AM/CW/SSB |
FT-101の特徴
この機種は生産台数が数万台といわれ爆発的な売れ行きでした。
CBを意識したと思われるAM回路と27MHz帯を加えた事により、CBer達にも大人気になり、さらにアメリカ向けの輸出で売り上げを伸ばしました。
本格的にソリッド・ステート化されながら高周波電力出力はテレビ用の水平出力真空管で、前段にも12BY7Aという真空管が使われました。
当時はまだハム用で電力増幅用に使えるトランジスターがありません。
それでも“トランジスターが使われている”というだけで、目新しさを追うハムにとっては関心は高かったと思います。
外観も、それまでのハム用通信機と違ってFT-101はコリンズのSラインやKWM-2に似た色をしていました。
回路構成も斬新でした。
コリンズのKWM-2にはない電源回路、クラリファイヤー回路を内蔵させ、RFタイプのスピーチ・プロセッサーも内蔵されていました。
基本的にはKWM-2を真似た回路構成でしたが、CWフィルターも内蔵できるなど、KWM-2とはちょっと違った機能もありました。
外部機器も、スピーカー、モニター・スコープ、リニア・アンプなどを揃え、Sラインに対抗していました。
トリオがアマチュア用にこだわってTS-520には、採用されなかった27MHz帯とAMモードを加えた事によって、当時流行りだしたCB無線の愛好家にも購入者が増え爆発的に売れ行きを伸ばしました。
同様の理由で輸出も好調で、ヤエスの経営基盤はFT-101によって安定したと言えます。
CBバンド、JJYバンド(10MHz)は水晶を入れるだけでOK。
受信部と送信部の前段部分は本格的に半導体化されましたが、ファイナルはテレビ用の水平出力真空管6JS6で、前段には12BY7Aという真空管が採用されました。
以後ヤエスのHF機の多くはファイナルに6JS6,6KD6といういわゆるテレビ球が多用されました。
当時はまだハム用でファイナル及び前段にに安定して使えるトランジスターがありませんので、ドライバー段、終段に真空管を使用しました。
この事はトリオのTS-520も同様です。
ただトリオはナショナルの送信管であるS2001を採用しました。
プリセレクター回路にμ同調機構を採用したのもトリオのTS-520とは大きく異なる点でした。
この辺は設計者の感覚によるものだと思われますが、テレビ球の採用はコストカットの影響もあったものと思われます。
外観も、それまでのハム用通信機と違ってFT-101はコリンズのSラインやKWM-2に似た色をしていました。
回路構成も斬新でした。
コリンズのKWM-2には無かった電源回路、クラリファイヤー回路、RFタイプのスピーチ・プロセッサーも内蔵されていました。
基本的にはKWM-2を真似た回路構成でしたが、CWフィルターも内蔵できるなど、KWM-2とはちょっと違った機能もありました。
外部機器も、外部VFO、スピーカー、モニター・スコープ、リニア・アンプなどのラインナップを揃え、Sラインに対抗していました。
FT-101の主な仕様
周波数範囲:3.5~28MHz
電波型式:AM/SSB/CW
サイズ:340W×150H×290Dmm
重量:約15Kg
電源:AC100V、12V
最大消費電流:20A(DC12V時)
最大送信出力:100W
送信終段名称:6JS6C×2
受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン方式
(当時のカタログより抜粋)
トリオのTS-520
遅れをとったトリオが満を持して1974年に発表したのが、TS-520です。
トリオは前身のの春日無線電機商会を、ヤエスの前身のゼネラルテレビサ-ビスよりも少し早く1946年に 春日二郎氏(JA1KJ)が設立しております。
1974年にDタイプ(160W入力)とXタイプ(20W入力)で発売され,
1977年6月にSタイプ(160W入力)とVタイプ(20W入力)にモデルチェンジしました。
当時はヤエスのFT-101と人気を二分していました。
X、DタイプとV、Sタイプの違いは1.9MHzバンドが追加され主にRF部回路がより高性能に改善されています。
当然のことながらWARCバンドは未装備です。
SSBの混信の除去やNR装置も付いていません。
しかし基本性能が極めて優れておりますので、現在でも十分現役で使用でき、電源・スピーカーも内蔵しているので、HFの入門用としての性能を保持していると思います。
特に受信音質はオーディオでも山水電気(破産済み)、パイオニアと並びオーディオ御三家と呼ばれた音響のトリオの名に相応しく大変優れています。
長時間受信していても疲労感がなくヘッドホンで聞いていても心地よい音です。
デジタル受信音質と比べ物にならないくらい良いと思います。
フロントパネルには堅牢なダイキャストパネルを使用。
重厚なイメージを醸し出すとともに、VFOケースをパネルに固定することで安定度の向上にも寄与しました。
VFOの安定度では断然TS-520に軍配が揚がります。
3SK22-2SK19を使用したトリオの定番でTS-510の時は実用新案とかでブラックボックスになっておりましたが、以後アナログ機のVFOとして受け継がれていきました。
また受信初段には特性に優れたデュアルゲートMOS FETの3SK35を採用。
AGCは増幅型でSLOW-FAST-OFFの3段切り替え。
送信終段管は送信用に開発されたナショナルのS2001を使用し、通常とDX用の2段切り替えができる増幅型ALCでトークパワー(平均変調度)の向上を図るなど、さまざまな工夫が施されていました。
その割には100WタイプのTS-520Dが114,800円、10WタイプのTS-520Xが99,800円と
買いやすい価格設定としたことから、売れ行きは大変好調でした。
1977年には1.9MHz帯が追加され、PLATEやDRIVEのツマミに減速機構を採用、スピーチプロセッサーを装備したマイナーチェンジ版のTS-520S(100W)、TS520V(10W)が登場しました。
どちらに軍配が上がったのか?
これはもう好みの問題でしょう。
当時も「トリオ派」と「ヤエス派」に分かれておりました。
後にHFでもアイコムも人気が出てきて「アイコム派」も増えてきました。
アイコムも井上電機製作所時代はV.UHFのイメージが強かったのですが !
私はワッチをしている時が圧倒的に多いのでTS-520です。
新スプリアス規制対応の無線機もありますが、現在もメインリグのJRCのJST-245と併用しております。
新スプリアス規制に関しては新スプリアス規制に「貧乏ハム」はどう対処すればよいか?に詳しく述べています。
FT-101を何台か買取し少し使っていた時もありました。
切り替えてTS-520とFT-101を聴き比べた事はありませんが、後になって買取したFT-101を弄ってみるとリアパネルはヤエスに分があります。
特にIF-OUTは点検、調整するうえで便利です。
他にも通常ギロチン呼ばれるμ同調も魅力的で夜間の7MHz帯でTS-520のDRIVEと比較してみるのも面白そうであるが、最近はコンディションが悪いのでどうだろうか!