アマチュア無線家にとってテスターに次いで、揃えたいモノでありまた役に立つ測定器がオシロスコープです。
オシロスコープについて基本的な使い方から購入の際の注意点について述べています。
本記事は2018/11/21に投稿した記事をリライトしたモノです。
オシロスコープはアナログからデジタルへ
かってオシロスコープと言えば、アナログオシロスコープが当たり前でしたが、時代とともにデジタル・オシロスコープへと変わってきました。
デジタル・オシロスコープは蓄積機能を持つことが標準化しているので、一般的には「デジタル・ストレージ・オシロスコープ」(DSO)とも呼ばれています。
初期のDSOにはブラウン管が用いられていましたが、現在ではLCDのフラットパネルが主流となりカラーLCD表示が標準になってきました。
デジタル方式の長所
アナログ方式では不可能であった、単発現象にトリガをかけ波形を止めたり、トリガ条件の前におこった現象を確認するといったこともできます。
アナログ・ストレージ・オシロスコープで使われていた信頼性の低いストレージ手段をデジタルメモリで置き換え、データをメモリの許す限り好きなだけ保持できるようになりました。
高速なADCやDSPの登場によって、アナログ・オシロスコープよりも低価格で遥かに広帯域な信号測定や複雑な信号処理も行えるようになった。
デジタル方式の短所
エイリアシング
エイリアシングはサンプリング周波数の低下に伴う誤表示で、測定対象信号に対しデータポイントが荒すぎる場合に起きます。
デッドタイム
デッドタイムは、波形をデータ化し取り込んだ後、次の波形を取り込むことができるようになるまでの時間のことで、この間、デジタル・オシロスコープはたとえトリガ条件に合う信号が入力されても見逃してしまいます。
表示画面の見方
オシロスコープは「電圧の動き」を「時間の経過」にそって表示するものです。
表示画面に波形を描く方法は心電図の描き方と似ています。
波形は左から右へ等速で移動しながら電圧の大きさに応じて上下します。
電圧が大きくなると振幅が大きくなり、小さくなると振幅が小さくなります。
左右方向が時間軸です。
オシロスコープの表示画面は、基本的に縦方向が電圧、横方向が時間を表した2次元表示です。
表示画面の縦方向は電圧軸として電圧目盛、横方向は時間軸として時間目盛が刻まれています。
表示画面の縦軸は8分割されており、例えば8分割された1目盛あたりを1ボルトだとすると、その画面には8ボルトの電圧を表示できます。
時間軸もある幅を持って表示されます。
表示画面の左端から右端まで10分割されており、例えば10分割された1目盛あたりを1μsだとすると、その画面には10μsの時間区間を表示できます。
ツマミの働き – 波形を見やすくする
VOLTS/DIVツマミ
波形が垂直軸(電圧軸)からはみ出す場合や、波形の高さ(波形振幅)が小さすぎて
上下変動がよく判別できない場合には、VOLTS/DIVツマミで波形を見やすい大きさに調整することができます。
目盛を数えることによって波形振幅を測定できます。
仮に1V/divに設定して6.4目盛分あったとすると、6.4Vの波形振幅だと分かります。
SEC/DIVツマミ
波形が水平軸(時間軸)においても詰まり過ぎた場合や、逆に間延びし過ぎた場合、
SEC/DIVツマミを操作して波形を観測しやすい形に調整することができます。
横軸の目盛を数えることにより、波形の周期(繰り返し時間)を測定できます。
例えば1μs/divで波形が8.4目盛ごとの繰り返しだった場合には、8.4μsの周期だと分かります。
また垂直軸Positionツマミと水平軸Positionツマミにより、波形の上下左右の位置を調節できます。
トリガの掛け方
同じ位置にその波形たちを重ね描くようにトリガを操作することを「トリガを掛ける」と言います。
シンプルな繰り返し波形ならばトリガを掛けることは簡単です。
トリガツマミを操作して、波形振幅の中心にトリガレベルを設定すればよいのです。
ただし、周期性が複数混在した複雑な繰り返し波形については、トリガを掛けるためのコツが必要です。
まず、波形をざっと見て、混在した複数の周期の中から一番遅い周期を見つけます。
そして、一番遅い周期を持つ特定部分にトリガレベルを設定します。
信号への繋ぎ方
測定する信号をオシロスコープで観測するには、その信号をオシロスコープの入力端子
に接続します。
1つは同軸ケーブル(多くの場合はBNCケーブル)を介して、オシロスコープの入力端子に接続します。
もう1つは「プローブ」を使ってオシロスコープの入力端子に接続します。
同軸ケーブルを使用するケースは、被測定信号が出力端子を持っている場合やインピーダンス整合に関して問題を生じない場合に限られます。
同軸ケーブルによる接続は信号を劣化させる要素の少ない優れた方法ですが、多くの場合はプローブが使われます。
プローブは特殊な先端形状と高いインピーダンスを持つことにより、被測定回路のいろいろなポイントにアクセスできます。
プローブは利便性が高く、ほとんどのオシロスコープでは標準付属品となっています。
被測定信号を正しく表示し正確に測定する過程において、プローブは非常に大きな役割を担っています。
オートセットボタン
基本設定をオシロスコープに任せてしまうという機能が「オートセット」です。
オシロスコープの操作方法がよくわからない人でも、この機能を使えばオシロスコープが波形を正しく表示してくれます。
ただし、オートセット機能は万能ではありません。
波形が特殊な形状の場合には、正しい表示ができないということもあります。
この場合には、さらに基本的な操作を行うツマミ類を操作して望ましい表示を行う必要があります。
そのためこの機能は、基本操作を理解した上で使うよう心がけなければなりません。
正確な測定をするための注意事項
波形は画面に大きく表示する
オシロスコープで測定を行う際には、波形を画面をいっぱいに表示させることが重要です。
複数の波形を画面に表示するとき、互いが重なり合う表示を嫌って、それぞれの振幅を小さくして、縦に並べることがあります。
表示としては「良い」のですが、測定の精度が問われる場合は適当ではありません。
精度良く測定したい場合は、波形を画面いっぱいに表示させます。
プローブに関する注意事項
プローブについても注意事項があります。
それは「プローブ補正」を行うことと「GNDリードによる共振」に気をつけることです。
プローブ補正を怠る、プローブの周波数特性が平坦ではなくなります。
そうすると、高い周波数における振幅が本来の大きさと違って見えます。
例えば測定対象がきれいな矩形波(方形波ともいう)の場合、そのパルスの幅によって振幅や形状が違って見えます。
広いパルス幅では波形のエッジ部が尖った形状になったり丸まった形状になり、細いパルス幅では振幅が違って見えます。
もう1つの重要事項は、「GNDリードによる共振」です。
これはGNDリードのインダクタンスとプローブ入力容量によるLC共振が原因で起こるもので、「リンギング」と呼ばれる減衰振動が波形のエッジ部に発生するという現象です。
本来の信号には無い波形(リンギング)が表示されてしまいます。
GNDリードは最短で使用します。
オシロ選びの注意点
周波数帯域
周波数帯域は、基準となる(十分低い)周波数の振幅に比較して3dB減衰する周波数と定義されています。
つまり、周波数帯域100MHzのオシロスコープで100MHzのサイン波を測定すると、表示される信号の大きさ(振幅)は実際の信号より小さくなり約70%の大きさにしか見えません。
100MHzのサイン波の測定には、300MHzくらいの周波数帯域を持つオシロスコープを選べば、誤差3%くらいで測定できます。
最大入力電圧
測定対象の波形の大きさ(振幅)もオシロスコープの選択時に考慮しなければならない項目の1つです。
多くのオシロスコープには、入力BNC端子の近くに電圧(200Vrms~300Vrmsくらい)が表示されています。
最高感度
測定対象の波形の小ささ(振幅)もオシロスコープの選択時に考慮しなければならない項目です。
測定する波形の振幅が小さいときは、できる限り高感度のオシロスコープを選ぶ必要があります。
どの程度小さな波形をどの程度大きく画面に表示できるかは、「垂直軸感度」という仕様に示されています。
この値が小さければ小さいほど、小さな波形を測定できます。
垂直軸感度は一般に、数mV/div程度です。
測定チャネル数
波形をいくつ観測する必要があるかについても、オシロスコープの選択時に考慮しなくてはなりません。
ほとんどのオシロスコープは観測できるチャネル数が2つから4つです。